オーバーレブ!回顧録
昨日は、横山峠の始まり。 取材のことを書きました。今日は横山峠、最後のお話し…。
リプリー戦の後から人気の出た「オーバーレブ!」本当に皆様のおかげでたくさんの人たちに読んでいただくことができました。
人気が出るということは世間の認知度が上がるということです。
読んでくださってる方々に、横山峠のモデルとなっているのが大垂水峠と感づかれ、本物の走り屋さんたちが大垂水に実際に走りに行ってしまったようです。
夜中にエキゾースト音、スキール音…
大垂水峠付近に住まわれている方々の迷惑になってしまったのです。
つまり、編集部のほうに苦情が殺到したのです。
それを受けて編集長に呼び出しをくらい、絵にする時に大垂水峠の特徴的な絵を変更してくれ…と、そう言われました。
しかしながら すでに何度も描いている横山峠の絵を今さら、変更など…したところでムダでしょう。地元住民にモデルにしていませんと伝えても通じないだろうし絵を変えたところで走り屋さんが行かなくなるなんてこともない。
それで、考えたのが横山峠封鎖の話しです。
その前にやっておかなきゃならなかったのが、横山峠での涼子VSサワコの一戦です。
編集長に横山峠からマンガは、撤退します。けれど少し時間をください…と頼みこみ
涼子VSサワコのバトル編に突入したのです。
カーアドバイザーにそのことを告げると
まだ涼子がサワコに勝つには早すぎるとの答え。
万にひとつの可能性もないのか…を聞くと
雨だ…路面コンディションが悪くてさらに、サワコのメンタルに乱れがあれば、涼子に1%の可能性を見いだすことができる…と。
追う者と追われる者という構図の二人。頭角を表してきた涼子に対し、免許取得以前からの師弟関係。かわいい後輩。師として、先輩としてのプライドのあるサワコ。
そんな感情のなかサワコが勝利に集中するだけのメンタルを保つなんてことはできないだろう。
これは…前にも書いた名作「エースをねらえ」のお蝶夫人と岡ひろみのが一戦と同じ図式です。
今こそ、「エースをねらえ」のあの岡ひろみの戦いかたを涼子にもさせるんだと
そんな気持ちで涼子VSサワコの一戦に望みました。
元々、マンガが終わる時に描こうと秘かに思っていた一戦です。気合いが入らないワケもなく…
雨のバトルということもあったので
作画にいつもより、一層のリアル感を表現してもらうために、雨の日にアシスタントを一人ずつMR2 のナビに乗せて走りに行きました。
フロントガラスに当たる雨、ドアガラスの雨の流れかた、路面を蹴るタイヤの水しぶき、濡れた路面に映るライトの見えかた。ルームミラーに移る後続車のライトの見え方、スピードを出した時のワイパーで雨を拭う感じ、コーナリングでの雫の流れかたなど…
ひとつひとつ説明して観察させ、それを絵にするんだと数時間かけてMR2 を走らせました。
そうして描いたあの一戦。
その直後の話しで涼子の舎弟が事故を起こします。涼子とサワコの師弟関係、その涼子に弟子、サワコのメンタルを揺るがす役割と事故を起こすために作られたキャラが小関だったのです。
最初は、死亡事故にする予定でした…それを描くことによって大垂水に行く走り屋さんたちに自重してもらうため、…とマンガにて危険な走行の招く被害の大きさを警告しようとしたのです…が
編集部から死亡はダメ!ハード過ぎるし、これからも続く「オーバーレブ!」に支障をきたすからと
それが…横山峠が封鎖となった経緯の裏話でした。
山口かつみ