オーバーレブ!回顧録
前に少しお話しした「オーバーレブ!」が始まった時のお話し。
副編集長にイニシャルDがウケてるから似たやつ描いてと、バイク好きだからクルマもイケるでしょ…と言われた時。
バイクとクルマは、違うだろ…と思いながらそれよりも大きな問題がひとつ。
山口「すいません。オレ、クルマの免許を持ってませんのでクルマ、運転したことないですよ。」
副編集長「え!そうなの?免許はバイクだけ?」
山口「はい!」
副編集長「けどまぁ、バイクもクルマも似たようなもんでしょ!」
山口「いや…違うと思いますけど。」
副編集長「大丈夫だよ!描けるでしょ!」
山口「う~ん…描けるかどうかは、…詳しくないですからねぇ」
副編集長「すぐに免許 取って!絶対、当たるから!主人公は女の子にしてさぁ!ほら山口さん、女の子を描くのは上手いから!」
山口「断れないんですね。わかりました。やりますけどいくつか条件があります。」
副編集長「何?」
山口「クルマについては、全くの素人です。マンガは、詳しくなかったり知ったかぶって描いたら読者にすぐにバレてしまいます。とくにクルマは熱心なファンがたくさんいて、他のマンガより見る目が厳しいように思います。バイク乗りから言わせてもらうと現に他の作家さんが描くマンガでバイクに乗ってるシーンとかあると、この作家さん、バイクに乗ったことないってすぐにわかるんです。」
副編集長「なるほどね。そんなもんなんだ。」
山口「好きだからわかるんです。だからクルマ好きな人が詳しくない自分が描くマンガを読むと、こいつ知らないなって クルマ好きな人にそっぽ向かれると思います。」
副編集長「考え過ぎなんじゃない。」
山口「そんなことないです。なのでクルママンガをやるなら、クルマに詳しい人をアドバイザーとしてつけてください。あと、時間をください。免許を取ってクルマに慣れますから…それと」
副編集長「まだ、なんかあるの?」
山口「このマンガの主人公も免許を取る前の素人から始めさせてください。自分も主人公と一緒に成長していきますから。」
そんなやり取りが「オーバーレブ!」の一番最初です。
東京での打ち合わせを終えて福岡に戻り、すぐに教習所に入校しました。バイクの免許を持っていたので2週間くらいで免許を取得。
その、免許取得の2日くらい前に東京からクルマが届きました。
MR2 です。
中には知ってました…という方や
驚いた…とか、呆れた…とか、興ざめ…とか
そんな方々もいるかもしれません( ´Д`)が、本当のことなんです。
免許を連載開始前に取得したばかりっていうのは公言してはいけません。内緒にしておいてください…と、当時 編集部やカーアドバイザーの方に固く口止めされておりました。
「オーバーレブ!」の船出は、これまでのどの連載よりもハードな始まりだったのです。